明日は明日の風が吹く

先日、うちの子がピジョンIII型のレストアに取り掛かった話をしましたが、その中での「父さん預かり」になっていたものが2点ありました。
その内の一つがシャッターのスローとセルフタイマーがおかしいというもの。
ですので今回はそれを直してみましょう。

まずはシャッターのスローから。

[4回]

矢印の部分が、シャターのガバナー。
スローシャッターの時間制御をつかさどります。

矢印の指したところから少し左寄りのところに茶色いギアが見えますが、そのギアと、更に左にある四角いような部品、これが時計で言うところのガンギ車とアンクルの役目をするのでしょう。
茶色いギアの回転に、一定の抵抗を持たせるために四角い部品がカクカク首を振って断続的に引っかかるという仕組みです。

で、スローが動かないのは、このアンクルが、ガンギ車に強く当たり過ぎているからであろうと予想しました。
この2つの部品の間隔が狭く、あたりが強くなれば抵抗が大きくなってガンギ車の回転は遅くなり、
逆に間隔が広く、あたりが弱ければ回転が早くなるはずです。
今回の場合、そのあたりが強すぎて、ガンギ車がうまく動かない状態だと思います。

しかしこの2つの部品の位置関係を直すことができるんでしょうか。
とりあえずガバナーを外してみましょう。


こちらが外したガバナー。

青矢印の部品が、黄矢印のアンクルの位置を動かす部品。
その部品位置を決めるのが、赤矢印のストッパーのようです。

ですので、この赤矢印のストッパーを少しだけ右に曲げてやれば、ガンギ車とアンクルの隙間が広くなって、うまく動くようになるはずです。

ということでこのストッパの曲がり具合を調整して、シャッタースピードを1秒に設定した時に、ほぼ1秒シャッターが開くようにしてしましょう。

しかし結構微妙な曲げ具合ですね。
でもまぁ、時間をかければそのうち合ってきます。

ということでスローはなんとかうまく動くようになりました。

そしたら次はセルフタイマーがちゃんと効かないのを直します。
動作を見ていると、セルフタイマーがちゃんと最後まで動かずに、シャッターが切れるまで行ってない感じです。
こういう時も、動作を何度も何度も確認していれば、そのうち答えが見えてきます。


シャッターが切れるとき、黄矢印の部品が左に動く仕組みになっています。
ですので、その動きを阻止すればシャッターはすぐに切れません。
そしてセルフタイマーをセットすると、赤矢印の部品が右に回転し、黄矢印の部品が入っていくはずの溝の部分を移動させます。
そのことで、黄矢印は左に動くことができなくなり、その間シャッターは待機させられることになるのです。
タイマーが動くと、赤矢印の部品は、次第に左に回転していき、最後に溝が現れ、その溝に黄矢印の部品が入って行く事でシャッターが切れます。

その動きをよく見ていますと。
どうも黄矢印の部品が、赤矢印の溝が現れてもすんなり左に動いていかないようです。

なんでかなぁと思ってさらに観察してみますと、黄矢印の部品が、少し左回り方向に曲がっていて、そのせいで赤矢印の部品の溝が現れても、一気に左に移動できず、じんわり動いて最後まで行かずに動きを止めるようでした。

では試しに黄矢印の部品を、右回り方向に曲げてみましょう。
これで、黄矢印の部品の左端が赤矢印の部品の溝に入り込んだ瞬間、一気に左に動いていくはずです。

セルフタイマーを作動させてみますと、

うん、OK。
うまくいきました。



これでシャッター関係の不具合は直すことができましたね。
ではレンズ周りはもう組めますか？

いや待てよ、
もう一つの「父さん預かり」、ヘリコイドの固着が残ってます。

しかしこのヘリコイド、CRC吹きつけて放置しても、
ドライヤーで熱を加えても、まったくもってビクともしません。
さて、どうしましょう。