明日は明日の風が吹く

今回は旧東ドイツのツアイスイエナの名玉、「フレクトゴン35mm」の修理です。
このレンズは私もとても興味がありますが、修理依頼品ですので勝手に撮影に使うことも出来ません。

このレンズは描写も良いらしく、なかなか人気のレンズです。
最短撮影距離も15cmほどで、マクロ的な撮影も可能です。
それに35mmと言う焦点距離もいいですね。
個人的にも1本欲しいレンズです。

[5回]

で、この個体の不具合箇所はと言うと、絞りが開放状態のままで全く動きません。
絞りリングを回しても手応えがありません。
どうしたことなんでしょうか。

まぁ、とにかくバラしてみましょう。

まずはマウント側の3本のマイナスネジを外します。
小さめの2本は今は外さない方がいいです。


するとこんな感じでマウント部と絞りリングが一緒に外れます。
ちなみに赤矢印が自動絞りの連動リンケージ。
緑矢印が絞りリングの動きを絞り羽根に伝える部分です。

こちらはちょっと置いといて、レンズ本体の方を見てみましょう。

ではレンズユニットの分離に掛かります。
このレンズはレンズ鏡胴にヘリコイドが付いた状態のものと、レンズユニットが分離できる構造になっています。


矢印の3箇所のマイナスネジを外します。
すると、鏡胴とレンズユニットはつながりがなくなってフリーになります。
が、外れるわけでは有りませんでした。
ネット上にそういう情報があったので、やってみたのですがどこかが引っ掛かっていて外れませんね。
ではやっぱり、先にレンズ前群を外しますか。

先程外した3本のネジをもう一度締めて、

レンズ前面の化粧リングを外します。
これはゴムとかを使って外しましょう。
そしたらその下に見えてくる前群のカニ目(赤矢印)を緩めます。


前群が取れたら、残りのレンズユニットはすんなり外れました。
赤矢印がレンズ前群。
緑矢印がレンズ後群と絞り部分を含むレンズユニットです。
左上のが分離した鏡胴。


そしてレンズ後群も外すと、いっぱいに開いた絞り羽根が見えてきましたね。
この状態で絞りのリンケージを操作しても、やっぱり絞りはピクリとも動きません。

では試しに絞り羽根をベンジンで拭いてみましょう。

すると、なんとか動くようになりましたね。


反対側も拭くと、よりスムーズになってきました。
どうやら絞り羽根が粘っていただけのようですね。
動かしながら見てみると、絞りの構造が分かってきました。
赤矢印のリングは絞りリングの動きと連動して動きます。
するとカムになっている部分にピンが当たるようになっていて(緑矢印部)、そのピンが動かされることによって絞りが開閉します。
外周方向に押されると絞りは開き、中心方向に戻ると絞りは閉じていきます。
そしてそのピンは赤矢印の下に見えるスプリングでテンションがかけられ、中心方向に引っ張られています。
それによってピンはリングのカムに常に接触する状態が維持されます。

今回の不具合は、絞り羽根が粘って動きにくくなり、リングを操作して開放になった段階で緑矢印のピンが外周方向に寄って止まってしまったと言うわけですね。
だからカムにはピンの接触による抵抗がなくなり、リング操作での手応えがなかったんですね。

では絞りをオーバーホールして、もっときれいにしておきましょう。

ですが今回はこの辺で。